ペべクとは、結婚式のあと夫側の親族にする挨拶の式。韓服を着てそれぞれの親戚の人の前でクンジョル(大きいお辞儀)というのをしなくてはならない。
クンジョルは男性用と女性用とぜんぜん違う。男性用のクンジョルは、日本でする土下座に似ている。まず立って、その後「ははーっ」ってな感じでひれ伏して地面に頭を擦り付けるくらいにまで下げる。女性用のクンジョルは、立って両手を目の辺りで合わせて、そのまま真下にスルスルスルっと座って、手はそのままで前に頭をずずいっと下げる。
「韓服着てクンジョルするってのはかなり大変だから練習しておいた方がいい」と言ってくれる人がいたので、オモニムとアガッシ(プーの妹)に頼んで、事前に練習しておいた。伝統舞踊やってるアガッシが教えてくれたポイントは足の合わせ方。左足を少し後ろに引いて、左足から折って次に右足、という風にして最後にあぐらかくように座ると、見た目滑らかに座れる。
はっきり言って、これがこの日一番緊張した。親族一同の前で、韓国式の挨拶をするのである。ここでこけたら一生なんか言われるかもしれない。ちょっぴり見栄っ張りのわたしとしては、うまいことやりこなして「ほお、ちゃんとできるじゃないか」と思わせたい。結婚式自体が終わってもペべクのことで頭がいっぱいで、ちっとも落着かなかった。

ペべク室に入ると、式場の係のおばさんがすでに待っていた。おばさんはわたしの着替えを手伝ってくれる。チョゴリ(上着)を着た後、上から更に上着を着せられた。これではせっかくのきれいなチョゴリが見えないのでちょっと残念だった。頭にばかでかいかんざしのようなものを差して、それに布を巻き付けて肩から前に垂らす。更にほっぺたに赤い丸を貼り付けるのが伝統的だ。でも、それが“おてもやん”のようで、どうしても嫌だったわたしは、おばさんがはりつけようとする前にきっぱり断った。
さて着替えが済んで、プーの親族が入ってきた。ペべク室の正面にテーブルが置いてあって、その上にペべクのウムシク(食物)が置いてある。干したなつめと栗を山積みにしたもの、何やら乾物のようなものがきれいにもりつけられていて、全部で四品。このペべクのウムシクは新婦側が準備する(と言ってもお金を出すだけだけど)のがしきたりらしい。

まずブモニムがジョル(お辞儀)を受けられた。プーと並んで横に係のおばさんがついて、「ブモニム、ジョルお受けください」と言って、クンジョルを三回半した。三回+半というのは、三回クンジョルした後、立ったままもう一度お辞儀することを指すらしい。横でおばさんがジョルのスピードも調節してくれるので、らくちんらくちん。なんだ思ったより簡単。
クンジョルの後、わたしが杯を持ってプーがそれにお酒を注ぐ。でもこれはわたしたちが飲むのではなくて、ブモニムに差し上げるもの。ブモニムはお酒を飲んだあと少しお話(役に立つ説教のようなもの)をなさって、その後なつめと栗を投げられた。それを手ぬぐいのような布で、わたしとプーが受け取るのだ。なつめは男の子、栗は女の子が生まれるということらしい。ちなみに最初に入ったのは栗だった(後日談:「栗=女の子」わたしたちの場合、的中であった)。
ブモニムの次はハルモニム(おばあさん)。係のおばさんがクンジョルは一回だけだと言った。クンジョルをして、同じようにお酒を注いで、ハルモニムが一言おっしゃった後に、なつめと栗投げ。その後、ハルモニムは封筒に入ったお金をテーブルの上に置かれた。こうやって親戚の人から集めたお金で新婚旅行に行くものらしい。
更に次は、正式には、その他の親族の方々夫婦一組ずつに、それぞれクンジョルをしなくてはならならなかったらしい。でも、このときは省略して、皆さんに一まとめに集まっていただいて一回お辞儀をする、という風にした。アボニムの兄弟、プーの兄弟、それからなんだかよくわからない親戚の方にジョルをしたあと、特別にうちの親にもクンジョル受けてもらうことになった。伝統的には新婦側の両親にはしないものなのだけど、特別に・・・と言っていた(が、後日masakoさんの結婚式に行ったら、そこでもmasakoさんのご両親もクンジョルを受けてらした。最近の傾向なのか?)。

すべての人に挨拶しおわったあとで、プーとわたしが席につき杯を交わしてなつめの実を半分ずつかじりあった。後でアルバム見て「なんでペべクのときキスなんてしてるんだろう?」と思ったら、それはなつめの実をかじってるときの写真だった。なんだかなかなかえっちである。
締めくくりにプーがわたしをおんぶしてペべク室を一周した。そのあとオモニムをおぶってわたしも後ろについて一周。これはこれからわたしたちがお世話しますよ、ということらしい。
そして、そして、ようやくすべてが終わった。ペべクが終わったのでやっと興奮が冷めてきた。ふと気がつくとわたしの友達や妹たちがみんなペべク室に入ってきていた。みんな写真撮ったりしながら見ていたらしい。そのときまでちっとも気づかなかった。